平沢進 ニューアルバム 変弦自在 レビュー

http://8760.susumuhirasawa.com/modules/docs/hengen.html

ラスボスのごとくたたずむ平沢さん。この決まってるのになんかズレてる感じは平沢さんの超絶な魅力です。
平沢さんのパートナーであり、善き理解者である高橋かしこさんがアルバムの感想を列挙されている中*1、私のような若輩者が感想を書くのは大変おこがましいこととは思いつつも、思ったことを正直に書いてみようと思います。
『変弦自在』は平沢さんのバンドP-modelのデビュー30周年、ソロデビュー20周年を記念して始まった企画、http://8760.susumuhirasawa.com/の一環として発売されたアルバムです。平沢さんが過去に発表した曲に弦楽アレンジを施してアルバムを製作し、ライブで披露するというのがその趣旨なのですが、今回のアルバムは平沢ソロ名義で発表された曲の弦楽アレンジ集となっています。では、各楽曲の感想をば。

1.夢みる機械
今監督の次回作のタイトルです。正式にMADHOUSEが製作続行を発表しました。*2。原曲は平沢さんの2ndソロアルバム『サイエンスの幽霊』に収録されています。今回のアレンジで目立つのは、なんと言ってもテスラコイル
参考画像

ライブ『PHONON 2551』で初お披露目*3となった平沢さんの相棒は、このアルバムでも唸りをあげています。しかし、ライブで平沢さん曰く観客を「江戸時代」に飛ばしたその威力はパッケージ化されたCDでは軽減され、なんだか平沢さんの掌で平沢さんに反抗しているかのような可愛げな音を奏でてくれています。曲は還弦主義を象徴する、平沢さんのナイロン・ギターによって原曲の柔らかな質感を持ちつつも、壮大なオーケストラによって豪華に飾られています。コードを加えられたことによってより不安定になった夢みる機械の中は、質素かつ豪華で、平沢さんお得意の対照的なものの両立に支えられていて非常に快適です。歌詞は原曲のままで一見すると意味不明な世界です。しかし、意味不明故に聴く人によってそのイメージはどんどん広がります。この歌詞を唱える平沢さんの声は、なんだか気取って落ち着きはらっているのに、どこかハラハラさせる浮遊感があります。「続出するバグは〜」の件は、ぉお!言えた!という感じです(笑)

2.サイレン *Siren*
原曲は6thアルバム『SIREN セイレーン』に収録されています。今監督が亡くなった時に平沢さんが製作した曲です。
http://8760.susumuhirasawa.com/modules/prepro/index.php?fct=photo&p=84
還弦作業するにあたって描いたイメージはこうだ。突然街にサイレンが鳴り響き、ビルの角を曲がるとあの「パプリカ」のパレード・シーンの有象無象、魑魅魍魎たちが今監督の棺を担いで行進して来る。もちろん棺の蓋は開けっ放しだ。あの崇高な死に顔で街を清めるために。さて、修羅どもよ、我々もあの列に加わろうではないか。
平沢さんのイメージ通り、今日は祭りだとサイレンを鳴らした車が人々を先導し、ロール気味のスネアとシンバルが囃したてるパレードをバックに、美しい平沢さんの声が響きます。私は勝手にこれは追悼曲ではなく、私たちのそばで生きている「半分の今 敏監督」を応援する歌だと思っています。間奏の「OH-」は悲しみに溢れたものではなく、大変静かで声を抑えたものながら、とても力強いものです。それに、歌詞にもあります。「キミが生きるよ」と。友人(などと一括りにできない間柄だったのだと想像しますが)の死に直面しながらも、ファンのことを考えつつ仕事を成す姿勢はプロそのものだと感動しました。

3.Mother
原曲は7thアルバム『救済の技法』に収録されています。元々ストリングス色が強かった曲なので、還弦主義というよりは管弦主義という感じで、非常に気持ちのよいブラスが聴けます。原曲を特徴づけていた何を言ってるかわからないコーラスは残っていますが、サビの低音掛け合いコーラスはブラスに置き換えられています。全体的にロール気味のスネアとテンポの速いバスドラムが大げさに鳴って、原曲よりテンポアップしてポジティブ成分が増した勇気づけられる曲になっています。

4.金星
原曲は1stアルバム『時空の水』に収録されています。平沢さんが弾くナイロン・ギターが曲を通して光る一曲です。夜、雨の山荘に寂しく取り残されていると、平沢さんが怪しげな楽団を率いてやってきます。きっと、みんな仮面を被っていますね。暖炉前のテーブルを囲んだ平沢楽団は静かに演奏を始めます。曲が佳境にくると、リズム隊が加わって、いつの間にか楽団への恐怖と共に寂しさは消えています。「朝が来る前に 消えた星までの地図を 君への歌に変え 地の果ての民に預けた」楽団が帰った朝、雨は上がっていて、美しい明けの明星が見えるのでしょう。

5.バンディリア旅行団
原曲は3rdアルバム『Virtual Rabbit』に収録されています。バンディリア旅行団は以前から名曲との呼び声が高く、「アレンジ曲の投票は人気投票ではなく、プロデューサー視点での投票をすること。人気投票になるだろうと思ってたので、投票結果はあくまで参考にする」と平沢さんが表明していたこと、また既にこの曲は一度アレンジされていることから、アレンジされないのではと思っていましたが、見事採用され、『変弦自在』の人気チューンとして、無料で配信される運びとなりました。
http://teslakite.com/freemp3s/totsugen/bandiria.mp3
民族楽器のようなシンセサイザーから始まり、ピッチカットとピアノのアルペジオが平沢さんの綺麗なボーカルをサポートします。その後参戦してくる、Motherのようにずんずん進んでいくリズム隊が光り、ハープが仰々しく奏でられ、ティンパニーは跳ねるように鳴り続けます。Ice-9のものと思われるギターソロはとても優しい。全体的にポジティブな響きです。皮肉などは感じず、純粋にハートフル。何よりこの歌の歌いだしが今回の企画を象徴しているような気がします。「遠い昔に この声は響けよ」デビューから30年。長きに渡って平沢さんを応援していた皆さんにこそ、この歌は相応しいと感じました。

6.トビラ島(パラネシアン・サークル)
原曲は4thアルバム『AURORA』に収録されています。9分40秒とアルバム中最長の曲です。金星で見せた高音を中心としたアプローチと異なるナイロン・ギターが響きます。もの哀しいバックの中で低音ボイスで押し殺したように歌う平沢さん。そして叫ぶように「日」と「火」に喘ぐ人を歌います。その歌に連れられてトビラ島に来てみると、パラネシアン・サークルの登場です。繰り返されるメロディの後に、他の曲では私たちを鼓舞してくれたオーケストラが、今度は私たちを飲み込んできます。四方を囲われた私たちは平沢さんの声に耳を澄ますことしかできません。その全てが荘厳で、飲み込まれているのに心地良ささえ感じる混沌です。曲の見事な展開と緻密さは、曲の長さを感じさせることなく、むしろ物足りなささえ覚えます。

7.環太平洋擬装網
原曲は5thアルバム『Sim City』に収録されています。原曲のシンセサイザーとは全く違う、過剰なまでのブラスとストリングスが初っ端から渦巻きます。ファルセットでチャップリンのように必死に道化師を演じるような平沢さんのボーカル。各パートが走り終わる度に、低音コーラスが逃がさないように現れて息つく暇もありません。デストロイギターは怒りとは違う激しい感情を奏でているように感じました。テンポが上げられて再生時間も短くなっており、ここまで壮大な曲を演奏してきたとは思えないあっけないほど潔い幕切れでした。



アルバムは全体的に壮大で、どの曲も何か一つは過剰過ぎるほど鳴っている楽器が見受けられます。それがいい意味で賑やかな雰囲気を作っており、また過剰でなくなるパートに戻ると過剰な音が聴きたくてまたリピートしてしまうという中毒性も生んでいると思います。平沢ソロ曲は原曲もハートフルな曲が多かったのですが、今回の平沢さんの高音はどれも透き通るようで、今回のアルバムの曲はより全体的にポジティブな気分にさせてくれるものになっていると思います。いつもはどこかシニカルな世界を一緒に持ってくる平沢さんですが、このアルバムは本当に温かい。まるで非常に悲しかった今監督の死を、平沢さん、スタッフ、ファンが一丸となって乗り越えて行っていることを象徴するような、自然と溢れ出る温かさです。感情がぶつかってくるわけではなく、調和が新たな調和を生んでいるような心地よささえ感じます。ほろりと流れ出るものがないと言えば嘘になりますが、それもとても朗らかなものです。私は何も知りませんが、裏に多くの人の激烈な悲しみとそれを乗り越えようとする強い意志があったことはわかります。このアルバムがポジティブに私には聞こえたように、今監督もどこかで楽しくこのアルバムを聴いていると私は信じています。

JAXA 宇宙科学研究本部 はやぶさプロジェクトマネージャー 川口 惇一郎氏 講演レポ

■Introduction
まず、私は生命科学専攻の学生であり、宇宙工学には詳しくないし、特段はやぶさオタクな訳ではないという言い訳を最初にさせてくださいwよって、中には事実誤認による発言もあるかと思いますので、いち素人の感想として読んでいただければと思います。

私は来年から化学メーカーでの研究開発を仕事とすることになっています。今まで大学と大学院で6年間、生命とは何かを細胞を相手に研究していた身からすると、かなり本筋とはズレた道へ進むことになります。その理由は紆余曲折あるのですが、いずれにせよ、私は未だに働いたことのない身分です。日本で技術員として働くことがどういうことなのか、内定先の会社の先輩に聞くミクロな体験だけでなく、経営者や大きなプロジェクトを成し遂げたマクロな視点も勉強したいと思い、このイベントに行ってきました。
http://techon.nikkeibp.co.jp/campus/mtg2010/
特に聞きたかったのは「はやぶさが挑んだ往復の宇宙旅行とカプセルの帰還、その飛行の歩み」というJAXAの川口氏の講演です。はやぶさには以前から興味を持っており、「働く」という視点を折り混ぜての講演が聞けるなんて願ってもないチャンスだと思いました。
朝の秋葉原は意外に静かで、ハングルや中国語が飛び交う雑貨屋や電器店を通りすぎて、ベルサールに着きました。都内には余り縁のない私ですが、来るたびに外国人の消費者としての影響の大きさを痛感します。会場はぎっちりと椅子が詰まっていて、参加者はほとんどが就活生のようでした。そりゃそうか。でも、これから働く人にこそ、こういうのは意義があると思うのですが。なんだか懐かしい中身のない企業や業界批判が就活生から聞こえました。
「マジ関西で働くのだけは勘弁じゃね?」
「東京から離れたら人生負けっしょ」
そうか。僕は人生負けだな(笑)なんだか可愛らしさまで覚えるような懐かしさでした。QUOカードをもらうのに必要なアンケートを書いている最中に、手短な司会の挨拶の後に川口氏の講演が始まりました。非常に落ち着いた方で、情熱を家に秘めた冷静な話しぶりに聞こえました。はやぶさの基礎データや複雑な推進原理まで解説してくださった懇切丁寧なお話だったのですが、1時間の講演全てを列挙はできないので、気になった話をテーマごとにお話しようと思います。

NASAもためらうプロジェクトを
JAXAは1985年にサンプルリターン研究会を発足し、彗星のダストサンプルを採取するという計画をNASAと共同で計画しました。しかし、当時の探査機の推進力は化学ロケットで得ており、燃料タンクの重量が大きすぎて不可能という結論に至りました。しかし、その後1996年、NASAはアイデアや着想は「サンプルリターン研究会」そのままに、ディスカバリー計画を策定し、単独で小惑星探査機や彗星探査機を次々に打ち上げました。
川口氏:「NASAにアイデアを盗られたと思いました。悔しくて悔しくて、我々はNASAもためらうミッションを実行せねばならないと決意しました。その後、イオンエンジンスイングバイなどの次世代技術も先行されましたが、そのころ我々も独自に全く同じ技術を開発しており、むしろ我々の方向性は間違っていないと確信しました」
はやぶさプロジェクト成功の鍵はここだと思います。JAXAの皆さんは、人材も予算も何百倍も差があるNASAと本気でやり合う覚悟を持っていたのです。そのためには、誰もやろうとは考えなかった、60億kmのイトカワへの長距離往復ミッションしかないとプロジェクトチームは考えました。この長距離航行のkey technologyが5つあります。

■Five key technology
1.イオンエンジン・・・小学生のような概略図ですみませんw住来の化学エンジンと比べて、イオンエンジンは推進剤が帯電しているので、電場によって単位量辺りの推進力が大きく、燃料を節約することができます。

2.自律的なシステム・・・現在、地球から天体を観測したときの位置座標は地球から見て1万分の1度の精度で決定できます。しかし、小惑星イトカワは地球からはるか1億km以上離れた軌道を運行しており、地球からの観測精度では300km以上の誤差が生まれます。イトカワの長さは500mなので、とてもじゃありませんが地球からのデータだけではやぶさを誘導できなないので、はやぶさ自身に種々の電波・光学機器を積んで自律的に軌道を修正します。
3.サンプル回収・・・小惑星では非常に引力が小さく、ドリル等では反発力でうまく地表を掘れないので、弾丸を打ち込んで飛び散ったサンプルを回収します。残念ながら弾丸の発射には失敗していました。
4.大気圏再突入・・・はやぶさのカプセルはスペースシャトルと違って、大気圏内を自力飛行できないので、軌道を安定させるために再突入角度が深くなり、スペースシャトルの10倍の熱量に絶えなければいけませんでした。
5.スイングバイ・・・イトカワへ、イオンエンジンの噴出のみで軌道を調節し、なおかつ大きな推進力を得るのは困難なので、大気圏を脱出したはやぶさは、地球の引力で勢いをつけて、なおかつ軌道を調節してイトカワへ向かいました。

■成功の秘訣は『意地と忍耐』『チームワークとモチベーションの維持』
はやぶさは光を発するストロボターゲットをイトカワに落とし、そのストロボの点滅を画像処理して距離を調整しながら着陸するシステムを用いていました。ストロボターゲットは2台あって、1台を発射するために3回着陸を試みたのですが、結局ターゲットの着地は失敗しました。2台目は、なんと全世界88万人の署名が入ったもので、これは失敗できないとチームは大きなプレッシャーを抱えました。事態打開のため、川口氏は全メーカー、JAXAのプロジェクトに携わる全人員の立場によらない評価試験を実施しました。その結果、はやぶさの完全自動システムに人間が介入できるようにシステムを書き換え、爆発的に処理速度を上げることに成功し、本番のストロボターゲット着地を成功させました。
苦難はその後もやってきました。はやぶさは帰還時に燃料漏れを起こし、通信も遮断されてしまいました。受信周波数も送信周波数もわからない。空虚なノイズが毎日毎日、司令室に響きました。
川口氏:「メーカーの士気が徐々に下がっていくのを感じました。『うちの技術はいらないね・・・』と言って、実際に人員もカットされました。私はsolutionの可能性が十分にあることを何度もプレゼンしました。『はやぶさは自律的に一方向に回転が安定する設計なんです!いつか通信は安定します!』『太陽電池で電力は回復できます!』私が何より恐れたのは予算がつかないことだったのです」
川口氏:「私は毎朝、司令室のポットのお湯を替えておきました。チームのみんなに『まだ閉店じゃない』と知らせるためです。皆さんがもし司令室にやってきて、ポットのお湯が冷めていたら、『ああ、もう終わりなんだな』と感じてしまうでしょう?」
科学技術は紙の上、コンピューターの中で大成されるものじゃありません。観察者や実験者が粘り強くチャレンジを続けることの大切さを自覚させてくれるお話でした。そして、最終的には、やはり人の営み。敬愛する平沢進さんの歌、「夢みる機械」の歌詞、『激励こそ最良のメンテナンスである』を思い出します。その後、実際に通信は回復しますが、それはビーコンによる1bitの通信でした。しかもはやぶさは回転し続けているため、通信は定期的に切断→回復→切断→回復→・・・を繰り返しています。司令室は細切れの指令を全て7週間かけて伝達させることに成功しました。
川口氏:「エンジニアは『夢じゃないか・・・』とつぶやいていました」
新たな通信方法が確立され、それは「温度が基準値を超えたら1分間通信を止める」というような超アナログなものでした。そんな通信方式でも、確かにはやぶさは地球に向かっている。徐々にチームに士気が戻ってきました。その後、全イオンエンジンが寿命を迎えるという危機が訪れました。このとき、有名な話ですが、イオンエンジンAの中和器とBのイオン源を組み合わせての噴射によってこの危機をチームは乗り越えました。

このイオンエンジンAとBをつなぐバイパスダイオードは川口氏もその存在を把握しておらず、事前に使えるか実験もしていないものでした。また、壊れたイオン源に電気が流れると、大きな熱が発生し、はやぶさの他のシステムが破壊されるリスクもありました。しかし、やるしかない。
川口氏:「最後は神頼みなんですよ(笑)中和神社という名前の神社が岡山にありましてね。こりゃ行くしかないということでお参りに行って木札を買いました。そこの神主さんがなんとはやぶさのファンの方だったんです(笑)不思議なつながりがあるものだと思いましたね」
実際にこの組み合わせ航行は成功し、はやぶさは地球へと帰還することができました。
川口氏:「でも、運を拾うのはその人の努力、実力です。努力とは、意地と忍耐なんです。」

■『高い塔を建てなければ、新たな水平線は見えない』〜次の世代へ〜
川口氏:「燃料漏れが起こったとき、弾丸発射によるサンプル回収がうまくいっていないことも発覚しました。しかも、世間には既に弾丸発射は成功したと発表していました。世間に嘘をついてしまったわけです。このままでは、科学技術自体がただのリスクだと思われてしまうのではないかと不安になりました」
川口氏:「はやぶさプロジェクトが始まった頃、世間はバブル崩壊の真っ只中でした。しかし、夢を持った企業の皆様と、このプロジェクトをスタートさせることができました。現在も当時も不景気だったことには変わりありません。それなのに、今はどんどん投資に関する価値観が下がり続けています。このプロジェクトを通して、是非皆さんにそういった価値観を改めて欲しいんです」
川口氏:「アメリカはいつだって自分たちが世界一だとアピールしています。今度のNASA小惑星探査も、はやぶさを半ば無視して『自分たちが世界一』と豪語しています。肝心なのは、そのアピール先が外国ではなく自国であることです。日本はここが決定的にかけていて、最近はむしろ世界一を追うのはもうやめようというムードさえ感じます」
川口氏はとても冷静な方でしたが、氏が抱えている不安は相当大きいものなのだろうということが伝わってきました。日本は科学技術によって顕著に発展してきた国です。そこへの投資を減らすということは将来の日本の発展を閉ざしてしまうに等しい。日本が財政的に危機的状況なのは確かです。今日本が捨てるべきは本当に科学への投資なのか。私は答えは否だと思います。科学はミクロには、このはやぶさプロジェクトのように成功と失敗がはっきり見える賭けに見えます。しかし、実際には科学に携わる全員が知恵とリソースを共有し、少しずつ知見を増やして進歩を生む世界なのです。日本の科学技術のマスを小さくするということは、すなわち進歩を停滞させることであり、こと科学については、選択と集中が短期的に判断できないものなのだと思います。川口氏の発言からも、安易な判断に対する警戒が読み取れました。
ここまでのお話を聞いて、はやぶさがプロジェクトに携わる人々の情熱によって支えられていたことがよく分かると思います。そして、このプロジェクトが大変温かな人間味によって成されていたことをよく表したエピソードがありました。
川口氏:「カプセル分離後に、はやぶさが写真をとりましたよね?あれ、実は完全にボランティアなんです。司令室の有志が是非はやぶさに地球を見せてあげたいと言って、やってくれたんです。4年間凍結していたカメラが起動するのか疑問でしたが、無事撮影に成功し、スタッフも皆喜んでいました。」
川口氏:「再突入時の写真を御覧ください。紫色の大きい光がキセノンタンク。青いのが酸化剤です。ちょっと離れたところにあるのがカプセルです。これを見て、まるで子を守る母のように私には見えました。そして、回収されたカプセルに、なんとはやぶさとカプセルをつなぐケーブルがへその緒のように残されていたんです。誰もが溶けると思っていたので、驚きました。それに、不思議なもので、カプセルのビーコンは産声に聞こえました。」

はやぶさは、懸命に次の世代へとつながるカプセルを生んでくれたのだと思うと、大変感慨深いです。
川口氏:「私はただ自分の野望のために次のプロジェクトの予算が欲しいわけではありません。皆さん、この技術は世界一だと、私は胸を張ってここで言えます。私はアメリカで実際のアポロを見て胸を高鳴らせました。しかし、アポロは30万kmを航行したに過ぎません。60億kmもの距離を航行して帰ってきたカプセルは日本にしかないのです。私はこの成果を根づかせて、未来に自身を与えたいのです。これはまぐれなんかじゃありません。私の夢は太陽系を繰り返し航行できるシステムをつくることです。高い塔を建てなければ、新たな水平線は見えないのです」

改訂復刻DIGITAL版 音楽産業廃棄物 パッケージ版簡単レビュー

10月16日に発売されました、「改訂復刻DIGITAL版 音楽産業廃棄物 パッケージ版」
改訂復刻DIGITAL版 音楽産業廃棄物(パッケージ) [P-0001] - 3,909円 : Zen Cart [日本語版] : The Art of E-commerce
現在、P-modelデビュー30周年、ソロデビュー20周年記念として、過去にリリースした自身の曲を各アルバムでのリミックス希望の投票結果を参考にしながらリミックスしていく『凝集する過去』という企画を平沢さんが進めています。その企画の一環として、平沢さんがツイッターを始めたのですが、そのフォロワーが3万人を超えたため、その記念として平沢さんはライブを1月に行うことを決定し、平沢さんと共に仕事をしているライターの高橋かしこさんは、過去に出版された平沢さんのデビューからの仕事をまとめたアンソロジー本「音楽産業廃棄物」の改定版を出すことを決めました。「音楽産業廃棄物」は絶版で、非常に入手困難だったこともあり、馬の骨*1の間でも再販を望む声が多数ありました。そんな中、満を持して発表された「改訂復刻DIGITAL版 音楽産業廃棄物」はDL版とパッケージ版が用意された電子書籍となっています。パッケージ版は500人分の注文が無ければ販売しないというお触れだったので、ツイッター上では、「後何人?後何人?」という馬の骨のやりとりも見られました。こういうインタラクティブな要素は参加する物としては楽しいですね。結局無事予約数は9月20日に500枚に達し*2、発売の運びとなりました。発売の経緯を編集の中心となった、構成の高橋かしこさんが自身のblogで書き記しています。*3

さて、家に届いた「改訂復刻DIGITAL版 音楽産業廃棄物 パッケージ版」の梱包がこちら。

なんとシャレた。これを受け取った母は「大学関係の何か?廃棄物って?」。さすが10年前から先を行ってる名前は、今も先を行ってますwさすがです。その箱を開けると、ジャジャンとDVDが入ってます。

平沢さんのアルバム「ソーラーレイ」を思わせるデザインです。そしてDVDだけでなく、

こんなフォトグラフまで入っていました。今監督がコンテを担当したP-modelの写真がベースです。いかにも“音楽産業廃棄物”って感じ!
そして、DVDをケースから出すと、

ななななな、なんですと!!!!消費期限は二年後!きちんと消費せねばなりませんね。しかしまぁ、産業廃棄物に消費期限とは。確かにDVDって意外と劣化するのが早いらしいですけどね。諸行無常。ディスクはこんな感じです。

また何か小ネタがあるんじゃないかと、光をかざしてみたりしました。さすがにあぶったりはしてないですけどwDVDを起動させると、カッコいいデジタルを思わせる数字の模様乱舞が始まり、コンテンツが一覧に表示されます。コンテンツは動画の平沢さんインタビューを含め、用語解説やライブの記録など、平沢さんの仕事の歴史や仕事に対する態度をどんどん知っていける充実の内容です。まだまだ私も読み切れていないので、これからが楽しみです。しかも、今回はテスト版ですがスマートフォン用にライト版のpdfも同梱されており、このためにスマホやパッドが欲しいと思うほどですw iphoneでの「改訂復刻DIGITAL版 音楽産業廃棄物」の読み方については、こちらで大変分かりやすく解説されています。
書を携えよ、町へ出よう - iPhone音廃本インストールのススメ:博物苑顛末録:So-netブログ
そして、今回面白いと思ったのが、TAINACO-1とSim chatのプログラムです。TAINACO-1は簡易ドラムマシンで、以前平沢さんがライブで披露したプログラムです。入力したドラム音が、実際にドラムを叩くTAINACOの動く姿と共に奏でられるようになっています。ループもできるので、これを使って何かしてくれる方が出てくれるのではないかと楽しみにしています。そして、Sim chat。これは平沢さんとのチャットを疑似体験できるというもの。こんな感じの面白おかしい会話が楽しめます。

こんなに楽しい会話になるとは思っても見ませんでしたwまだまだ、平沢さんの隠れたキャラを引き出せる会話があるかも・・・?勿論他にも壁紙やスクリーンセーバーなど、3800円とは思えない豊富な内容となっています。現在、在庫数は250と少なくなっているそうです(10月17日現在)。気になっている方には是非おすすめです。DL版は2300円とさらにお値打価格になっています。
改訂復刻DIGITAL版 音楽産業廃棄物(ダウンロード) [P-0002] - 2,366円 : Zen Cart [日本語版] : The Art of E-commerce
私のような後乗りファンにとっては、過去の平沢さんを知るための、文字通りバイブルのようなものです。かしこさん始め、今回の企画を実現してくださったスタッフの皆様に感謝です。

今 敏監督追悼企画レポート2

こんにちは。早速前回の補足からさせて頂こうと思います。前回書くのをすっかり忘れていたのが、今さんの闘病生活の話。随所で有名になっていますが、今監督のベッドルームは作業ができるように改良されていて、特に巨大マッサージチェアは「ガンダムのコックピット」と呼ばれていたとか。*1

平沢さん:「机がアームにつながっていて、必要な時にでてくるんです。“平沢さん、ぶら下がってみます?”なんて言われました。」

また、経時的に自動で向きを変える装置のついた見るからにハイテクな車いすなどもあったそうで、今監督は闘病生活までネタにしていたようです。そして、平沢さんが「話がずれるけどいいですか?」と言ってまで提供してくれた“ネタ”がこちら。

平沢さん:「今監督が頭をボウズにしたんですよ」

司会:「ああ、奥さまが切ったという」

平沢さん:「そうそう。それがね、今さんすごく似合っててかっこいいんです!あれは日本兵ですよ!!日本兵!!」

観客:(笑)

平沢さん:「病気が良くなったら、頭はずっとそれで行きましょうって言ってたんですけどね」

病気をネタとしてきちんと消化し、人生のバランスを保つ姿勢を最期まで今さんやその周りの人たちが貫いていたことが伝わってくるエピソードでした。

そして、映画「千年女優」と「パーフェクトブルー」の上映。もう何度もDVDで観ている映画ですが、パプリカから今監督を知った私にとって、この2つの映画をスクリーンで観るのは初めてです。家の小さなディスプレイと音響で観るそれとは大きく違っていました。背景はきちんと景色になり、目がカバーする視野が広がった分、特に千年女優の淡い雪の情景がとても映えていました。千代子が人力車→自転車に乗っていくシーンに打ち出される煙も生き物のように感じられました。そして何より、鍵の君のために初めて千代子が嘘をつく瞬間。あの千代子が女優になった瞬間の声優さんの演技の息遣いが館内に響いた時は、なんとも言えない気持ちになりました。「あぁ、今から走って行くんだね」正に次から次へと映像上を走る演出に、取り残されたいようなついていきたいような焦燥感や今監督と千代子をダブらせてみてしまう自分を感じながら、90分はあっという間に終わってしまいました。「あぁ。こういう“映画”だったんだ」平沢さんの話にもあった、何層にも重なったレイヤーのように、どこまで掘っても「お手上げです」と言いたくなるような今監督の持ち味である緻密さの中に、まだなんとなく勢いで乗り越えた部分が残っているような、パワフルな印象を受けました。

続いて観たパーフェクトブルーは、お客さんのリアクションがとても良かったです。これも映画館ならではですね。結構中身はハードな映画だと知らずに来た方もいらっしゃったようで、特に上映後は「なんなのこれ〜」「聞いてないよ〜」という声も聞かれました。上映当時もこんな感じだったのかなぁ。こういうのもできちゃうんですよね、監督。プロだなぁ。家で観る以上に、映画館では画面の明暗が強調されるので、未麻が「TAKE2!!」や「TAKE3!!」の掛け声とともに明るい部屋のベッドでハッ!と目を覚ます繰り返しのシーンでは、観てるこちらまでその度にハッとさせられました。

私にとってはとても贅沢な時間で、これは今監督の作品を見るといつもなんですけど、決して達せない境地を提示されているのに、感覚ではその境地を手繰れているような、錯覚にも似た快感に溺れた3時間でした。お腹いっぱいではなく、まだまだ溺れたい。浸っていたい。やっぱり、こんなに素晴らしい作品を作れる人は今監督しかいない。もう新作が観れないなんて、本当に残念です。あんなに素晴らしい方がいないなんて、本当に悲しいです。でも、どなたかがおっしゃっていたように、今監督は半分くらい、まだここにいらっしゃるのでしょう。その半分はずっと私たちに残って、受け継がれて、どこかで誰かと影響しあい、共有し合い、人の営みとして繋がっていくのだと思うと、私はまた、前を向いて歩いていける気がします。沢山の世界を見せてくれて、沢山の人との出会いをくれて、直接的にも間接的にも、今監督がいなければ、今の私はありませんでした。ご冥福をお祈りするとともに、本当に心からの感謝の意をこめて。

合掌。

*1:2010/10/15 追記

今 敏監督追悼企画レポート

こんにちは。本来は、いち学生ファンが好きなモノを観てどう思ったかなどということは、それこそ「チラ裏」に書いとけと言われるものだと思いますが、今回の企画は参加人数が非常に限られたものだし、twitterを見ていると、やはり思ったことを発信すると共感が生まれ、発信しなければ存在しなかった意味が生まれるなと日々感じていますので、ブログを書いてみようかと思いました。いきなり堅いな。なんだか気恥ずかしい中、書いていこうと思います。

今 敏監督追悼企画、千年女優パーフェクトブルーの上映会は新宿バルト9で2010年10月9日 24:30から、ドリパスの企画として行われました。
http://www.dreampass.jp/deals/8/
ドリパスとは、ツイッター上でドリパス君 (@dre_pass) | Twitterをフォローして「RT@dre_pass 『ドリパスでつぶやいた映画が新宿バルト9で上映される!?』 http://www.dreampass.jp #dre_pass」というコメント付きで観たい映画をつぶやくと、リクエスト数に応じて映画が上映されるという非常にインタラクティブな企画です。インタラクティブライブで有名な平沢進さんを想起させるような、双方向的なコミュニケーションを好んできた今監督の追悼にはぴったりな企画だったと思います。前売り券販売後に、特別ゲストとして平沢さんのトークイベントが告知され、当日券は徹夜組を含む熱心なファンの方によってすぐに完売になりました。かくいう僕も当日券組でした。「あぁ、オレも熱心なんだなぁ」と思う次第でありますw言い訳をすると、ツイッターでリクエストしたにも関わらず、上映前日まで企画が実現したことに気づいていませんでした。何の言い訳なんだろう。

イベントの開演直前に着いた新宿は激しい雨でした。バルト9の入り口の床が雨で非常によく滑ったのが印象的です。ピカピカなんでしょうね。エレベーターで9回に上がり、エスカレーターでさらに上へ。館内に入ると、スクリーンの下に小ぢんまりと椅子が2脚置かれ、その間に挟まれた丸テーブルにはミネラルウォーターが置かれていました。右側中段の席に座ると、ほぼ同時に館内が明るいまま、今回の企画者でもある司会の方の挨拶が始まりました。緊張のせいか、この司会者の方が中々のカミカミスト。でも、このカミカミが追悼企画という悲しみでなく、ほんわかした笑いの雰囲気を最初に作ってくれた気がします。

「それでは、特別ゲストのミュージさン、平沢進さんです」

の声と共に、拍手の中スタスタとスクリーン右側から平沢さんが登場。馬の骨*1の歓声などはさすがに聞こえませんでした。

司会:「今日は満員御礼なんです」

平沢さん:「あ、そうですか」

司会:「当日券もすぐに売り切れてしまったそうで」

平沢さん:「それはおめでとうございます」

観客:(笑)

非常に穏やかなムードでトークが始まりました。最初は、今監督と平沢さんの出会いの話。要約すると、出会いは1990年代に今監督と、今監督と同郷のライターさんが一緒に取材に来たのが最初だそうです。アニメやマンガに平沢さんは疎いため、最初はかなり失礼な態度をとったかもしれないとのこと。やはり今監督が後ろで髪を束ねていたことが印象的だったようです。ライブには毎回今監督が来てくれるので、出会った後は、ライブの度に客席を見渡して頭一つ出ている人を見つけては、「あ、今日も来てくれてるな」と思っていたそうです。

次は、一緒に仕事をするようになった縁についての話でした。今監督の初監督作品「パーフェクトブルー」の中には、平沢さんを連想させる映像が散りばめられています(劇中のホテルの看板に「HOTEL ハルディン」とあるなど)。映画を観てそのことを知った平沢さんのスタッフが、アルバム制作中の平沢さんにそのことを伝え、制作中のアルバムの帯のコメントを書いて欲しいということになったそうです。恐らくこの仕事でしょう。http://konstone.s-kon.net/modules/recommend/index.php/content0002.html
その後、平沢さんは千年女優の音楽を担当することになるのですが、これが次のアルバム制作時期と重なりました。そこで今監督から出された要望は「主題歌はLOTUSっぽい曲で。後はお好きにどうぞ」。

平沢さん:「今監督が「これ(LOTUS)!」と。でも、そういうのってとても難しいんです。全く同じのを出すわけにいかないし。かと言って、イメージを崩しちゃいけないし」

と言いつつも、平沢さんも気を使ったのか、最初に今監督を安心させるために主題歌「ロタティオン」を作ったそうです。音楽制作時に、平沢さんは今監督から絵コンテしかもらっておらず、どのように映像が展開されるかわかりませんでした。しかし、今監督はいつも平沢さんの音楽を聴きながら映像制作をしていたので、逆に音楽ありきの方が制作しやすかったのではないかとのこと。

平沢さん:「私の音楽から、「お!これいただき!」みたいなこともあったみたいです」
平沢さん:「例えば映像を渡されると、今度はそれに合わせるように、本来は8小節で展開させるものを7小節半で展開させなきゃいけないような難しさがあるんですが、今監督の作り方だとそういうのはあまりないんです。今監督は音楽的に映像を展開させていったのだと思います。ただ、それって恐いですよね。今監督からは言われませんでしたが、映画を観た方から「お前のせいでこうなった!」と言われかねないですから(笑)」

平沢さんの楽曲から多くの発想をもらっていた今監督だったからこそ、平沢さんに任せて大丈夫だろうという思いがあったのでしょうし、平沢さんも今監督となら通じ合ってるだろうというシンパシーがあったんだろうなと感じました。きっと素晴らしい信頼感がお互いにあったのだと思います。

ここで、話は今監督と平沢さんのプライベートのお話へ。

平沢さん:「亡くなる一月ほど前から頻繁に今さんの家に行っていました。これは前からなんですが、その時もいつも私の曲が家でかかってました。私は自分の曲をあまり持っていないので、「私のレアトラックを貸してください」と言いたくなるほどでした」

平沢さんは照れるように話していました。家が遠いこともあって、プライベートで会うのはライブの時くらいだったそうです。

平沢さん:「今監督はすごいバランス感覚の人でした。善意を示したら、今度は悪意でそれをシャレにしちゃうんです」

司会:「ブログに書かれた「さようなら」という文章を読みましたが、やっぱりそういう方なんですね」http://konstone.s-kon.net/modules/notebook/archives/565

平沢さん:「あの文章のままの方だと思ってもらってかまわないと思います。悪意に隠れたすごい善意の人」

この話にはすごく共感しました。作品を通して、その隠れた善意がにじみ出てくるような感覚を何度も味わいましたから。実際にお話した時も、世間のことから、身近なことまで、毒っぽいことを吐きながらも相手を思いやった話し方をされる優しい方だと思っていました。

ここで、観客とのQ&Aタイム。

司会:「せっかくの機会なので、何か質問がある方はどうぞ手を上げてください」

平沢さん:「今さんについてでお願いしますね」

質問された方:「失礼します。今さんに怒りを覚えたことはありますか?」

平沢さん:「ないです(即答)」

観客:(笑)

質問された方:「そうだろうと思いながら質問しました(笑)」

平沢さん:「今監督も私もなんでもネタにしてしまう人間なんです。だから、実際にはケンカしたことはないですが、例えケンカをしたとしても、すぐにネタにして一緒に笑ってたでしょうね」

質問はこのひとつでお終いでした。

司会:「それでは、残念ながら時間がなくなって参りました。最後にこれから上映される千年女優について平沢さんが印象深いシーンや音楽などを教えてもらえませんか?」

平沢さん:「うーん・・・。余り言いたくないんです。というのも、今さんの映画は先ほど話した今さんの性格のように、すごい意地悪ですごい親切な作りなんです。本当に言いたいことの上に何層ものレイヤーがあって、各レイヤーに言いたいことっぽいことが散りばめてあるんです。だから、映画を観て、それぞれの人がそれぞれの層まで映画を掘っていって、それぞれの層に共感できるようになってるんです。本当に言いたいことには中々辿り着けないけど、そうやって観た人に自由を与えてるんです。だから、あえて言いません」

今監督の映画を見てるものとしては、納得の極み。おっしゃるとおりだと思います。そして、再び拍手の中、平沢さんはスタスタと退場。最後にちょっとジャンプして段上から降りたのが可愛かったです← 最後に司会の方が、再びカミカミの締めの挨拶をすると、すぐに館内が暗くなり、当然のようにCMもなく、いきなり映画が始まりました。


大分長くなってしまったので、映画本編についての感想は後日書きたいと思います。終始穏やかな空気の中、平沢さんの話を聞くたびに「そうそう!やっぱりそうですよね!」と共感の山が築かれていくような感覚でした。やはり、いい作品の裏にはいい人達のいい営みがあるんだなと実感した次第です。拙い文章を読んでくださった方、ありがとうございました。話の都合上時系列上の展開を若干変えている部分もあります。訂正を含め、何か思ったところがあれば、是非コメントしてください。

*1:平沢さんのファンのこと